2014年1月8日水曜日

英国大学院の授業:特許ライセンシング 英米欧日比較してみる

ロンドン大学の秋学期は、9月に始まり12月に終了します。その秋学期の締めくくりの3回の授業は、特許ライセンシングに関するものでした。特許ライセンシングの授業が始まるまでに、知的財産取引の概論商標ライセンス→フランチャイズの話がされてきたのですが、語彙力がまだまだ不足している私には、予習するにも授業を聞くにもとにかく知らない単語が多過ぎて、辞書なしにはなかなか読みすすめられない状態。辞書を手にとる度に、自分の英語力不足を実感していました。

しかし、11月の最後の週に始まる特許ライセンスの授業の予習を始めると、あら不思議!ほとんど辞書のお世話にならなくても、いろんな文章がスラスラ読めるのです。いや、不思議でもなんでもなく、特許だと訴訟の問題となる事例が基本的には技術系なのでもともと工学系出身の私には事実関係の把握は簡単だし、知的財産権の中でもやっぱり特許関係の実務を一番多くしていたという経験の現れなんだと思います。語学というのは、語学そのものの知識だけでなく、やっぱり周辺知識が重要だということを今更ながら再認識した次第です。

さて、この特許ライセンシングの授業で興味深かったのは、イギリスというEU圏の中にあるCommon lawの国という立場で、国際的な事案を数多く扱わなければならない知的財産権の取引を教えるという点です。

以下、ちょっと専門用語多めでまとめてみます。

1. 共有に係る特許権の実施許諾について
日本でも、ライセンシングの際に日本では共有者の同意がなければならないと規定されているのに対して、米国では共有者の同意なしに特許権者はライセンシングや譲渡等できるので注意しましょう。というのは、よく言われる話です。
イギリスも、実施許諾や譲渡には、日本と同じく共有者の同意が必要です。そのため、米国の共有者の立場についても、日本で米国の話をするのと同じように、

「米国で共同出願する際は、書面で実施許諾や譲渡等をするときの条件などを決めておきましょう。」

という話がされていました。

2. 専用実施権者の当事者適格について
まず、専用実施権の設定についてイギリスと日本の大きな違いは登録の効果です。
日本では、専用実施権の効力発生要件として、登録があります。しかし、イギリスは専用実施権の効力発生に必ずしも登録は必要ありません。ただし、訴訟等の問題が生じた時などには、原簿に登録しておくことは専用実施権者にとって有利になります。

次に当事者適格についてですが、こちらは、英米の比較をするにあたって、
「Common lawの国といっても、場所によってその立場は色々あるので注意が必要」
というような事が言われ、訴訟段階において、Common lawであるか否かはやはり重要なファクターなのですね。

3. 改良発明について
改良発明は、私自身にとっては、ライセンシング契約なしで共同研究をした際に発生する改良発明の特許出願等についてどうするか?というのが、実務で時々直面した経験がありました。大学院の授業では、ライセンシング下でのImprovementが発生した場合にどうするか?という問題提起で話が進められていましたが、基本的には、共同研究下での話とほぼ同じ問題が発生すると考えられ、興味深く聞きました。

ここで授業中の比較として面白いと思った点は、
「ライセンシング下で発生した改良発明をすべて特許権者に譲渡もしくはライセンス等するという取り決めは有効か?」
という問題提起に対して、

  • Common Lawとしては、有効である。
  • しかし、ECのCompetition lawでもUKのCompetition Actでも、無効にされる可能性ある。
との回答を示していた点です。
Common Lawの国としてのイギリスと、EUの一員として様々な面での調和の結果できた法律。そして、知的財産権の取引においては、取引の際に必要な契約そのものを規定する契約法は、Harmonaizationがされていないという事実。これらの関係性については、とても面白いと思いましたが、一方で深入りすると、Competition law やEuropean lawにまでガッツリ手を出す事になるので、フムフムとこのあたりは簡単に見て、頭の片隅にこのような関係性をインプットしておくぐらいがいいのかもしれません。



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